よく「部屋の空気を入れ替える」といって窓を開け、せっかく暖房で温めた部屋が寒くなってしまう。なんてことがありますよね。実際、空気を入れ替えるのにどれくらいの新鮮な空気を入れればいいのか、化学工学の知識を活かして計算してみました。
まず計算するために下のようなモデルを考えました。

各記号は以下の通りです。
- 空気流量 F [L/hr]
- 新鮮な空気の濃度 C0 [kg/L]
- 空気の濃度 C [kg/L]
- 部屋の容量 V [L]
部屋に新鮮な空気が入って出ていきます。新鮮な空気を流す時間 t [hr]が長くなるほど空気が置換されて新鮮な空気濃度Cが高くなっていくわけですね。
では空気の物質収支式を考えてます。
収支式は、入り=出ー蓄積ー消失 です。
入り = F×C0 [kg/hr]
出 = F×C [kg/hr]
蓄積 = V×C/t [kg/hr]
消失 = 0
すなわち、F×C0=F×C-V×C/t になります。
ここで微小時間dtを考えたとき、蓄積も微小になりますので、
収支式は、F×C0=F×C-d(V×C)/dt になります。
この微分方程式を解くと、
C=C0×(1-exp((F/V)×t)
となります。※初期条件はt=0のときC=0としています。
上式中にある(F/V)×tの部分ですが、見方を変えて(F×t)/Vと見てみましょう。
時間tだけ流した新鮮な空気の体積を部屋の大きさで割っていますので、
「新鮮な空気を流した量は、部屋の大きさの(F×t)/V倍である。」と表すことができます。
さて新鮮な空気の置換率(C/C0)は、
置換率[%] = (1-exp((F×t)/V))×100
で表すことができます。
ではエクセルなどを用いて【空気の置換率】と【流した空気の量】についてプロットしてみます。
置換率 | 新鮮空気を流した量 (部屋容積の倍数) |
1-exp(-( F × t ) / V) | ( F × t ) / V |
0 | 0 |
39.34693403 | 0.5 |
63.21205588 | 1 |
77.68698399 | 1.5 |
86.46647168 | 2 |
91.79150014 | 2.5 |
95.02129316 | 3 |
96.98026166 | 3.5 |
98.16843611 | 4 |
98.88910035 | 4.5 |
99.3262053 | 5 |

はい、お分かりの通り、新鮮な空気を部屋容積の5倍量入れることで99%以上は新鮮な空気に入れ替わるというわけです。
以上、化学工学の計算でした。
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